白い浴衣の人

「どなたかしら……」「いや、別に名前をいうほどの用で上ったもんでもないんですがね」 白い浴衣の人は、高くしげった夏草の穂を野原にでも立っているようにぬいて、それを指の先でまわしながら、「あなたの書かれるものを読んでいるもんだから……」といった。「…………」 伸子はきくような眼でそのひとを...

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自分の旅行のための用事

「――まあ、それもいいだろうさ、わたしの方だって、なにもきょうあすにきまるわけじゃなし……」 素子は、そういう伸子の心にはあまりさわらないようにし、さわらないことではやく、伸子がいわゆるみのった状態におかれることを期待している風で、自分の旅行のための用事で外出しつづけた。巣についた牝鶏のように、伸...

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伸子のなかに深い余韻をのこした

 伸子は、両手の指を胸のところで、もしゃくしゃと動かしてみせた。「それがまとまると、きっとはっきりすると思うの、だから、もうすこし待って……」「それゃ、待つも待たないもないけれど……」 相川良之介の死は、それを知った当座のおどろきや疑い、悲しさの激発が一応はしずまったあと、伸子のなかに深い余韻...

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